岡崎市の約60%は森って知ってた?森とまちをつなぐ「もりまち」に密着!

公開日:2024.09.30     暮らし
「オクオカ」で、里山体験イベントや移住相談などを開催している地域商社があります。その名も、「もりまち」。岡崎市に広がる森林が抱える課題を解決しようと活動しています。

オクオカとは、岡崎市の中山間地域を指す愛称。岡崎市の“奥座敷”という意味が込められています。そこで活動しているもりまちはどういう経緯でできた地域商社なのか、どういった活動をしているのか、もりまちのメンバー・加藤さんに伺ったお話も交えて、詳しくお伝えします。

もりまちとは?

  • メンバーの1人で、今回お話を伺ったもりまちの加藤さん

    メンバーの1人で、今回お話を伺ったもりまちの加藤さん

  • もりまちの事務所も、周囲を豊かな自然に囲まれている

    もりまちの事務所も、周囲を豊かな自然に囲まれている

もりまちは、「岡崎の森とまちをつなぎ、林業の活性化を通じて地域全体の発展を目指す」という願いのもとに立ち上がりました。

ミッションとして掲げるのは、「岡崎の森を起点に、中山間地域の持続可能性を高めること」。地域の森林所有者、デザイナーや他地域からの移住者などが集まり、日々さまざまな活動をしています。

岡崎市の約60%を占める森が抱える課題

そもそも、なぜもりまちが活動を開始したのか?その背景には、岡崎市と林業が抱える数々の課題がありました。

岡崎市の面積の約60%は森林で、さらにその多くはスギやヒノキなどを人工的に植樹した「人工林」。自然にできた森林とは異なり、人による定期的な整備が必要になります。

しかしこの人工林には、多くの課題があります。たとえば森林所有者の高齢化や、林業従事者の減少による整備不足。また、所有者自身もどこまでが自分の敷地なのか分からないために第三者にも整備を依頼できないこともあります。
また、地産の素材が活用されていないことも挙げられます。加藤さんによると岡崎市産の木材は、市内で活用されることはごくわずか。多くが県外に販売され、岡崎市産とも分からないままどこかで使われている、というのが現状だそうです。

「岡崎市の木材としての販売ルートは、ほとんど確立されていません。岡崎市産の木材を地元で消費するよりも、県外の木材を岡崎市まで運んできて活用したほうが安価で済むことがあるんですよ。おそらく岡崎市内でも、地元の木材を使って建てられた建物はそれほど多くないと思います」(加藤さん)

こうした課題の解決に向けて活動しているのが、もりまちです。課題の解決に向け、まずは岡崎市の森林のことを多くの人々に知っていただき、森林に関心を持つ人や林業に従事する人を増やすところから着手しています。

「岡崎の中山間地域は、人口がどんどん減少しています。ですからまず、この地域に移り住む人を増やし、地域として維持しようとしています。そしてそうした人々の中から、1人でも林業の担い手が増えたら良いと思っています」(加藤さん)

もりまちの活動内容

もりまちでは、「イベントの開催」「移住相談」「市内産木材の流通促進」の、大きく3つの活動を行っています。

1.イベントの開催

  • 過去に開催された「森の女子会」では、森林ツアーとヒノキの木での蒸留体験などを行った

    過去に開催された「森の女子会」では、森林ツアーとヒノキの木での蒸留体験などを行った

  • 「岡崎アウトランダーの森」では、市内に工場がある三菱自動車工業とともに森林保全活動に取り組んでいる

    「岡崎アウトランダーの森」では、市内に工場がある三菱自動車工業とともに森林保全活動に取り組んでいる

岡崎の森を案内するツアーや体験、企業との共同事業を多数開催し、人々に岡崎の森林をより身近に感じてもらえるように働きかけています。

ときには「森の女子会」という女性限定の森林ツアーを開催したり、市内の小学校で出前授業をしたりすることもあります。

2.移住相談

もりまちでは、岡崎市が設置している移住相談専用デスク「もりまっち」の運営を担当。岡崎の中山間地域への移住を考えている市内外の人々の相談に乗り、個々に合ったエリアを紹介しています。

移住相談に来るのは、定年退職をして第2の人生を歩もうとしているかたから、「我が子を自然に囲まれた場所で育てたい」と考える子育て世代まで幅広いそうです。実際、もりまっちでの相談後に移住したかたもいます。

3.市内産木材の流通促進

  • 岡崎市役所裏手の「十王公園」にあるベンチも、もりまちが手掛けたもの

    岡崎市役所裏手の「十王公園」にあるベンチも、もりまちが手掛けたもの

  • 岡崎市産のヒノキの木を使った名札。岡崎市役所の職員にも利用者が多い

    岡崎市産のヒノキの木を使った名札。岡崎市役所の職員にも利用者が多い

もりまちでは岡崎市産の木材の流通を活性化させようと、販路拡大にも取り組んでいます。

まず「他県産の木材を買って運んできたほうが安い」という状況を打破すべく、自社で木材の在庫を確保。建材として希望者に販売するほか、木のベンチや木製の名札など多数の商品もプロデュースしています。

実際に市内に設置や導入がされたものも多く、加藤さんは「目標としていた『森とまちがつながること』が少しずつ叶ってきていると感じる」と話します。

岡崎の中山間地域での暮らしってどんな感じ?

今回、お話を伺ったもりまちの加藤さんも、オクオカに住んでいるそう。この地域で暮らしている感想を聞くと、次のように返ってきました。

「岡崎の中山間地域では、すごく人間らしい暮らしができています。現代では便利なツールやテクノロジーが登場してきていますが、それは言い換えれば自分たちに備わっているはずのアンテナをそぎ落としていることにもつながると思うんです。でも森の中で暮らすと、『この時期はこんな鳥の声がするな』『今はこんな匂いがするな』といったことに、気付きやすくなりますね」(加藤さん)

特に岡崎の中山間地域は、市街地へのアクセスの良さも魅力的。初めて自然に囲まれた生活をするときの入り口になるのでは、と加藤さんは言います。

もりまちが過去に移住相談に乗った人の中には「勤務先は市街地、住まいは中山間地域」といった生活をしている人もいるそうです。自然が身近にある日々を送る、あるいは「半分は都会で、半分は森で」といったように思い思いの暮らし方ができるのも、この地域ならではの魅力かもしれません。

地元の森林について知るところから始めよう

もりまちは今後、取り組みの認知度向上のために交流のきっかけ作りに注力していくとのこと。少しでも岡崎の森林や自然に関心を持ったかたは、ぜひイベントに参加してみてください。その一歩が、岡崎の森林を守り継いでいくことにつながるかもしれません。

イベント情報や移住相談窓口の詳細は、もりまちのWebサイトで発信されています。
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■もりまち

【TEL】
0564-82-3215(9:00~17:00)

【住所】
愛知県岡崎市淡渕町堂面125 わんパーク わんぱくハウス内