約1500年受け継がれてきた奇祭「夏山八幡宮の火まつり」

公開日:2018.09.21     "〇にナる" 岡崎まちものがたり
豊作と無病息災を願う夏山八幡宮の火まつりは、鬼の持つ燃え木に打たれると厄除けになって1年間病気をしないという言い伝えが残る奇祭。火の粉が舞う中で行われる勇壮かつスリリングな神事についてご紹介します。
  • 燃え盛る炎が闇夜を焦がす

    燃え盛る炎が闇夜を焦がす

  • 夏山八幡宮拝殿

    夏山八幡宮拝殿

  • 左:牙があって厳つい表情の柿平の鬼、右:人の顔に近い表情の平針の鬼

    左:牙があって厳つい表情の柿平の鬼、右:人の顔に近い表情の平針の鬼

  • 前回使ったものを見本にして藁細工を作っているそうです

    前回使ったものを見本にして藁細工を作っているそうです

  • 鬼が身に着ける帽子、物入れ、腰蓑(平針地区)

    鬼が身に着ける帽子、物入れ、腰蓑(平針地区)

  • 火起こしに使用。細くてやわらかな藁みご(穂の芯)を折れないように女竹に詰めています

    火起こしに使用。細くてやわらかな藁みご(穂の芯)を折れないように女竹に詰めています

  • 中央に御幣をつけた約8mの真竹が立つソダ山。燃え木ができるように積む技術が必要です

    中央に御幣をつけた約8mの真竹が立つソダ山。燃え木ができるように積む技術が必要です

夏山の誇りと伝統が感じられる祭り
531年の創建とされ、柿平、平針、寺平、寺野、鬼沢の5地区ある夏山の総鎮守、夏山八幡宮。火まつりは創建当時から行われているという神事で、岡崎市の無形民俗文化財にも指定されています。

古くは柿平地区が宵祭、平針地区が本祭を担当していましたが、現在は本祭を両地区が隔年で交互に担当。鬼の装束の違いなどはありますが、伝統は変わらずに両地区に受け継がれています。

例えば、結界を張るための注連縄や鬼の装束などの藁細工作り、女竹(めだけ)に藁みご(穂の芯)を詰める火起こしの道具作り、神社裏山の雑木をナタで伐採するソダ山作りなど、祭りに欠かせない準備も氏子たちが協力し合ってその技を伝えています。
  • かましょいの一場面。雌雄の獅子が噛み合ったところに仲裁に入る鬼

    かましょいの一場面。雌雄の獅子が噛み合ったところに仲裁に入る鬼

  • 御神火が着けられたソダ山を思いっきり扇ぐ鬼たち

    御神火が着けられたソダ山を思いっきり扇ぐ鬼たち

  • 鬼を挑発しながらも逃げ回る子どもたち

    鬼を挑発しながらも逃げ回る子どもたち

  • 打たれたい、でもやっぱり打たれたくない

    打たれたい、でもやっぱり打たれたくない

  • 弓矢に見立てた燃え木で、雄の獅子頭を射る「獅子討ち」

    弓矢に見立てた燃え木で、雄の獅子頭を射る「獅子討ち」

  • 小刀の刃を叩きながら、むしろの上を3往復し、鍛冶屋の名前を言う「小刀の目利き」

    小刀の刃を叩きながら、むしろの上を3往復し、鍛冶屋の名前を言う「小刀の目利き」

  • 段鈴を鳴らしながら、むしろの上を3往復する「鈴の舞」

    段鈴を鳴らしながら、むしろの上を3往復する「鈴の舞」

  • 薙刀を右肩に組み、3度回って右からと左からのすくいあげを7度行う「薙刀の舞」

    薙刀を右肩に組み、3度回って右からと左からのすくいあげを7度行う「薙刀の舞」

  • 所作の指南役であるババをひっくり返して鬼が勝つまで行う「相撲」

    所作の指南役であるババをひっくり返して鬼が勝つまで行う「相撲」

  • 鬼が交代する時には、ご褒美の米俵が与えられます

    鬼が交代する時には、ご褒美の米俵が与えられます

祭り当日の流れと所作事(しょさごと)を知って、火まつりを満喫
辺りが秋の夕闇に包まれる頃、本殿では祭りの安全祈願などが行われ、境内では参拝客がその時を待ちわびます。すっかり日が落ちると、雌雄一対の獅子が登場して「かましょい(獅子舞)」の所作事を披露。その後、ソダ山のお祓いをした宮司によって厳かに御神火が点火されます。

すると鬼や若者たちがむしろで扇いで火を盛り立て、ゴーゴー、パチパチと音を立てて燃える火の粉を浴びながらも、さらに、火柱が立つほどにむしろで煽っていきます。そのうちにソダ山に立つ真竹が熱せられて大きな音を立てて破裂。それを合図に一番鬼が本宮と末社に献火をして、追いまわしが始まります。

元気な子どもたちが「ボケ、ボケ」「ボケ鬼、ボケ鬼」と鬼を挑発するようにはやし立てれば、鬼は先端が赤々とした燃え木を持って全力疾走で追いかけます。鬼が向かう先の参拝客は蜘蛛の子を散らすように必死に逃げまわり「うわー」「キャー」と歓声とも悲鳴ともつかない声を境内に響きわたらせて、祭りは最高潮を迎えるのです。

鬼は一番鬼から五番鬼までいて、獅子討ち、小刀の目利き、鈴の舞、薙刀の舞、相撲の5つの所作事を披露して交代していきます。相撲以外は所作を指南するババに演技を認められること、相撲はババに勝つことで交代し、そうでなければ再び燃え木を持って参拝客を追いまわします。鬼が変わるたびに、鬼は勢いとスピードを取り戻すため、祭りは最後の最後まで盛り上がります。
  • 平針地区の潔斎。左:瀧森の不動様にお参りをする、右:不動の滝での水垢離(みずごり)

    平針地区の潔斎。左:瀧森の不動様にお参りをする、右:不動の滝での水垢離(みずごり)

  • ヒノキ板に女竹を押し当てて順番に回転。5人の息が合わないと摩擦した熱が保てません

    ヒノキ板に女竹を押し当てて順番に回転。5人の息が合わないと摩擦した熱が保てません

神聖な御神火はどこから?神事の裏側をちょっと拝見
参拝客を追いまわすシーンが心に残る鬼役ですが、他にも重要な役割を担っています。それは火まつりの主役ともいえる御神火の火起こしです。一般のかたは滅多に見ることができない、この神事について少しご紹介しておきましょう。

当日、冷たい水で身を清めた鬼役たちは、夏山八幡宮の幣帛殿(へいはくでん)にて採火を行います。ヒノキの板に女竹を使った棒を押し当てて回転させるという昔ながらの方法のために、呼吸やタイミングが合わないと、なかなか火が起きないそう。種火が採れる頃には5人の鬼役は汗だくになってしまうこともあるのだとか。

こうして採火される御神火です。みなさんも、ありがたい火に打たれて厄落としをしてみてはいかがでしょうか?
○取材協力:夏山学区総代会長 鈴木泰孝
○夏山八幡宮の火まつりdata
■開催日:旧暦9月9日に近い土曜または日曜日(現在の10月中下旬頃)
※2018年は10月14日(日)の予定
■時間:17時頃(神事)、18時頃(ソダ山への点火)
■場所:夏山八幡宮
■駐車場:あり
※火の粉が舞うため、難燃性の汚れても良い服装等でお出かけください。
○関連学区まちものがたりリンク
44夏山学区まちものがたり

インフォメーション

場所:愛知県岡崎市夏山町字宮本