岡崎の花火大会の起源⁈岡崎三大まつりの一つ「菅生祭」

公開日:2022.07.04     暮らし
岡崎の夏の風物詩と言えば花火大会。
絶え間なく打ち上がる花火は必見で、毎年多くの観客でにぎわう、岡崎が全国に誇る花火大会です。
実はこの花火大会、岡崎最古の神社・菅生神社の祭礼がはじまりであることをご存知でしたか?
今回は、岡崎の花火大会の起源となった菅生神社の伝統催事「菅生祭」をご紹介します。

菅生神社とは

菅生神社は、岡崎公園のすぐ東(かつては岡崎城の敷地内)にあります。
日本武尊命(ヤマトタケルノミコト)により、西暦110年に創建された岡崎最古の神社です。
御祭神には、天照皇大神(アマテラスオオミカミ)・豊受姫命(トヨウケヒメノカミ)・須佐之男命(スサノオノミコト)・徳川家康公・菅原道真公をお祀りしています。
  • 花手水

    花手水

  • 御朱印 ※2022年春限定の御朱印です

    御朱印 ※2022年春限定の御朱印です

松平家・徳川家康公ゆかりの神社で、家康公が25歳の時に、厄除け開運祈願をしたそうです。その後、江戸幕府末まで岡崎城主代々の祈願所として厚く崇敬されました。

現在は、季節限定の色鮮やかな御朱印や華やかで美しい花手水が人気の神社としても知られています。

岡崎と花火

もともと花火は、戦乱の終焉とともに、軍事用の火術が観賞用に変化したものと言われています。
戦国時代が終わり泰平の世となった江戸時代、一揆や反乱を抑えるため、徳川家康公は火薬の製造・貯蔵を、原則、徳川家発祥の地である三河地方のみに制限し、火薬の平和的な利用を命じました。

このような歴史的な背景が「三河花火」の誕生に繋がり、三河地方の花火は全国でもトップレベルの技術に発展したそうです。

やがて、庶民の間で祭礼用の献上花火が奉納されるようになりました。

現在でも、岡崎市を含む三河地方では、打ち上げ花火・玩具花火・仕掛け花火の製造が盛んで、祭礼としての花火や花火大会が各所で開催されるなど、花火文化が受け継がれています。

岡崎の花火大会の起源となった「菅生祭」

菅生祭は、能見神明宮大祭(※1)・岡崎天満宮例大祭(※2)と並び、岡崎三大まつりの一つとされています。
主祭神である須佐之男命への厄災や疫病除けを祈願したお祭りで、毎年、7月19日に宵宮祭・20日に例大祭・8月の岡崎市花火大会と同日に菅生祭鉾船(ほこぶね)神事奉納花火が行われます。
岡崎の花火大会は、鉾船神事奉納花火を受け継いだものだと言われています。


※1
江戸時代中期ごろから受け継がれている祭り。
祭礼の1つ「御神輿渡御(おみこしとぎょ)」は、能見神明宮の御神体を神輿に移して氏子の各町内を巡り、安全を願い、お祓いを受ける神事です。

※2
東海道岡崎宿の伝馬町を中心に行われた祭りで、建立当初から古き伝統を守り祭礼日を変更せず開催されています。
「奉納神楽舞」「子ども腕ずもう大会」「剣道大会」などが行なわれ、多くの露店と大勢の人でにぎわいます。
菅生祭の様子
7月19日「宵宮祭」:各町の氏子による手筒花火の奉納
7月20日「例大祭」:神事の様子
8月「鉾船神事奉納花火」:鉾船から花火を奉納

全国でも珍しい船上から花火を奉納

菅生祭の中でも、船上から花火を打ち上げる「菅生祭鉾船神事奉納花火」は迫力満点。

岡崎の花火大会では、会場となっている乙川に2艘の船が浮かんでいます。
その船は「鉾船」といい、菅生の大神様へ花火を奉納する船です。
  • 菅生まつり版画(大正時代)

    菅生まつり版画(大正時代)

かつて鉾船神事奉納花火は、7月19日の宵宮祭の日に開催されていました。
歴史はかなり古く、江戸時代中期ごろの記録では、疫病退散の厳粛な神事が中心でした。それが、江戸時代後期になると、現在に近い壮麗でにぎやかな祭りに変化したそう。提灯を付けた鉾船が出され、菅・弦楽器が奏でられ、お囃子(おはやし)と共に菅生川を下り、船中から氏子たちが町内ごとに造った金魚花火や手筒花火を奉納していました。

しかし、戦時中の空襲など、代々続く神事を守るのにも一苦労があり、戦後、「鉾船神事奉納花火」は岡崎城下家康公夏まつり花火大会と共催で行われるようになりました。

各町内ごとに打ち上げる手筒奉納花火も必見!

菅生祭では、宵宮祭の日に実施される手筒奉納花火も名物の一つ。
氏子たちが手に持ち打ち上げることで奉納を行う手筒花火は、勢いよく火花が上がり大量の火の粉が降り注ぎます。
それに怯まず上げ切る姿は勇敢で、厄災や疫病に立ち向かう姿を思わせます。
それぞれの町内毎に同じ法被をそろえて並ぶ姿も見物です。
昨今のコロナ禍の影響で、2020年と2021年は日本全国で花火大会や、練りこみ行列は中止を余儀なくされました。
宵宮祭も2020年は神事のみが粛々と執り行われ、2021年は細心の注意を払いながら、手筒奉納花火を実施。鉾船神事奉納花火は共同開催の岡崎城下家康公夏まつり花火大会とともに2年続いて中止となりました。
今年はすべての祭事が執り行われる予定です。

花火大会の根底に流れる、歴史と伝統を感じに、ぜひ菅生祭に足を運んでみてはいかがでしょうか?