キラリと光る匠の技~花火の匠~三河玩具花火

公開日:2021.07.30     暮らし
夏の風物詩として、全国で楽しまれている、夜空の下で色とりどりに輝く花火。
ここ岡崎は「三河花火」発祥の地として、広く知られています。
その歴史は古く、戦国時代までさかのぼります。当時、軍事の要である火薬の製造は徳川発祥の地である三河にのみ許されていました。やがて、江戸時代、泰平の世になり鉄砲職人の火術が観賞用花火の技として姿を変え伝承されたことで、一大産地になったと言われています。

花火には大きく分けて花火大会で見る打ち上げ花火や仕掛け花火と、家庭で楽しむ玩具(がんぐ)花火があります。
今回は、いくつか種類がある花火の中で、コロナ禍でもご家庭で楽しめる、玩具花火に注目し、岡崎発祥の玩具花火を作る匠の技と、花火の豆知識をご紹介します。

玩具花火の現状

  • 岡崎発祥の玩具花火「ドラゴン」

    岡崎発祥の玩具花火「ドラゴン」

昭和50年代、玩具花火の国内需要が高まったことから、国産花火の製造が間に合わず海外での製造が始まりました。それがきっかけとなり、安価で多く楽しめる外国産のセット商品が普及し、国産花火のニーズは減少していきました。現在は、国内で楽しまれている玩具花火の9割が海外で作られています。

日本煙火協会の調査によると国内生産額は、平成25年は12.2億円、平成29年は9.7億円と、5年間でぐっと減少していることがわかります。
ところが、新型コロナウイルス感染症の影響で全国の花火大会が中止となった令和2年は、玩具花火のおうち需要が高まり、12.7億円と増加しています。

岡崎発祥の花火を守る

  • 「ドラゴン」は種類も豊富です。

    「ドラゴン」は種類も豊富です。

海外製の商品が普及する中、岡崎発祥の玩具花火を守り続けている花火屋があります。
昭和3年から岡崎の地で家庭用花火を製造している株式会社太田煙火製造所です。

みなさんは「ドラゴン」という花火を聞いたことがありますか?
四角い箱の噴き出し型の花火で、2~3メートルの火花が噴き上がります。実はこの花火、岡崎生まれの国産花火で、昭和24年から太田煙火製造所で製造しています。火薬や材料費の高騰を受け、平成20年に一度製造が中止されました。
5代目社長である太田恒司さんは、純国産花火の「ドラゴン」を復活させようと平成28年にクラウドファンディングを実施しました。新聞やテレビなどのメディアに取り上げられるなど、予想以上の反響があり、目標の3倍以上である2,070,000円の支援金が集まったそうです。支援金は、ドラゴンの増産と純国産花火の普及のために活用されました。

花火の豆知識①製造編

みなさんは、花火がどのように作られているか知っていますか?
危険と隣り合わせの花火製造には守らなければならないルールがたくさんあります。
ここでは、2つのルールと気になる噴き出し花火の作り方をご紹介します。

ー静電気はご法度ー
太田煙火製造所では、夏本番が近づく7月になると、1日に約4,000本のドラゴンを作ります。花火づくりは、汗と金属粉まみれになる重労働で、特に湿度が高い日は暑さで大変な思いをするそうです。しかし、火薬を扱うため静電気はご法度。どんなに暑くてもクーラーや扇風機を使うことはできません。夏の過酷な暑さの中でも、安全管理をしっかりと行う必要があるのです。
作業のたびに体についた金属粉を洗い流す太田さんは「このまま帰ると車や家の中が金属粉だらけになってしまうからシャワーを浴びないとね」と夏場の苦労を教えてくれました。

ー噴き出し花火の火薬量ー
噴き出し花火の火薬量は火薬類取締法によって「15グラム以下」と定められています。限られた量の中で、いかに長く美しく魅せられるかが重要です。
ちなみに、ドラゴンは2種類の火薬を使用していて前半と後半で火花の見え方が異なります。前半はバチバチと弾け、後半になるとシューっと高く噴き上がります。ぜひ、実際にお楽しみください。

ー気になる噴き出し花火の作り方ー
1.配合した火薬2種類(マグナリウムとアルミニウム)を紙パイプに詰める。
2.火薬を詰めた紙パイプに蓋をする。
3.火薬を詰めて蓋をした紙パイプに導火線を埋め込む
4.パッケージに入れれば完成!
1.手際よく紙パイプに火薬を詰めていきます
2.小気味よい音とともに紙パイプに蓋がされていきます
3.素早く丁寧に導火線を埋め込みます
体についた金属粉を洗う太田さん

花火の豆知識②遊び方編

  • 国産線香花火。優しい灯りに心が安らぎます。

    国産線香花火。優しい灯りに心が安らぎます。

花火を楽しもうと準備していると、何年か前に買った花火が出てきた…。そんな時どうしていますか?

ー古くなった花火は使えない?ー
実は、玩具花火に使用期限はありません。低温で温度変化が少ない場所で保管し、状態が良ければ、たとえ製造から何年経っていても楽しむことができます。太田煙火製造所に保管されているドラゴンは20年ぐらい経つものもあるそうです。
それでも何となく湿気を帯びていることもあります。太田さんによると「湿気ているときは、天日干しすれば大丈夫」とのこと。湿気ているかなと思ったときは、遊ぶ前に天日干ししてみてください。

ーどうしても処分する場合ー
使っていない玩具花火を処分しなければならないときは、ひと手間必要。次のような方法で処分してください。
1.バケツを用意し、たくさんの水を張る
2.火薬の入っている部分をしっかりと水に浸ける
3.1週間以上水に浸す(火薬が包装容器から水に溶け始めたことを確認。紙パイプ式だと膨らみ溶け始め、水が濁っていきます。)
4.濡れたままの状態で可燃ごみの指定袋に入れ、決められたステーションに出して処分。(岡崎市の場合※自治体により処分方法が異なります。お住まいの自治体にご確認ください。)

花火は1本から楽しめます

  • たくさんの花火が並ぶ佐野花火店。1本から購入できます。

    たくさんの花火が並ぶ佐野花火店。1本から購入できます。

  • 「ありがとうね」花火の特徴を笑顔で教えてくれます。

    「ありがとうね」花火の特徴を笑顔で教えてくれます。

夏が近づくと、スーパーやホームセンター、コンビニエンスストアでもセットになった花火を見かけるようになります。少しずついろんな花火を楽しみたいな…。そんなニーズに応えてくれるお店があります。柱町にある佐野花火店です。
打ち上げ花火や噴き出し花火、手持ち花火と、選ぶのに困る程の豊富な種類の花火が店先に並んでいます。価格も「これで1本10円?」と驚くような安価に楽しめる手持ち花火があり、ついついたくさん選んでしまうこと間違いなしです。

この夏はぜひ岡崎の花火を、自宅で、家族で、お楽しみください!

※太田煙火製造所は、関係者しか入ることができません。今回は特別に許可をいただき撮影をしました。