キラリと光る匠の技 ~石の匠~ 岡崎石工団地

公開日:2021.05.25     まなぶ
石都岡崎。その昔、岡崎城城下町の整備のため河内・和泉(現在の大阪府)の石工を招き、石垣や堀を造らせた際、この優れた技術を持った石工たちがそのまま岡崎に移り住んだことが始まりといわれています。
石材加工に適する優れた花崗岩(かこうがん)が近くで採取できたこともあり、伝統的工芸品の「岡崎石工品」として現在までしっかりと受け継がれています。
今回はそんな岡崎石工品の産地組合となっている『岡崎石工団地』を訪ねました。

石職人、実はイラストレーター兼粘土職人

石工品の加工は彫るまでの準備がとても重要。石は彫りすぎると直すことができず、一から作り直さなければなりません。大きなものになればなるほど、それまでにかけた時間と苦労がすべて無駄になってしまうこともあるとか。

今回は、普段なかなか見ることができない作業風景を伝統工芸士の戸松さんに見せていただきました。
まず、紙に4方向から(場合によっては2方向)の完成予想イメージを描き上げることから始まります。空想の動物やこれまでにないものになると書籍や図鑑なども参考にしてイラストにしていきます。
そして、そのイラストをもとに粘土で立体模型を作っていくのです。2次元のものを3次元にすることで、出来上がりをイメージしやすくなります。
イラストや立体造形の技も石工品を造るためには欠かせないものなのです。
スケッチで完成イメージを描き上げます
粘土を使って立体にしていきます
粘土で模型を作る伝統工芸士の戸松政洋さん

伝統は立ち止まらない。石は暮らしとともに

石工団地には45社の石屋さんがあります(2021年5月現在)。少しでも多くのかたに石の良さを知ってもらい、石を身近なものとして活用してほしいと、石職人は伝統を守りつつ、新たな挑戦を続けています。

岡崎石工品は、岡崎花崗岩(かこうがん)を原料とした、灯籠・多重塔・鉢物などがあります。しかし、時代の変化とともに自宅の庭に石製品を設置する機会は減っています。
そこで、普段から石に触れてもらえるようにと、一輪挿しなど小型のものや、可愛らしい印象のもの、家の中でも飾ることができるインテリアなども制作しています。「石は硬いですが、普段の生活の中で優しさや温もりを感じてもらいたい」と伝統工芸士の磯貝さん。
岡崎の伝統工芸は、これからも暮らしとともに成長していくようです。
細かい部分まで丁寧に彫る伝統工芸士の磯貝泰隆さん
磯貝さんが伝統の技で作り上げたインテリア「石輪花」
左/切り出した石に正確に下絵を書き込みます 右/大型機械を操り加工していきます

悪い縁を断ち切りたい! 絶縁祈願の石工団地神社

何かと不安に感じることが多いこのご時世、悪い縁を断ち切る、石工団地神社の「絶縁祈願」を紹介します。

石工団地神社は、石作の祖神「建真利根ノ命(たてまりねのみこと)」やこれまで石工団地に関わってこられた先人をお祀りしています。昭和49年6月に京都の大歳神社(おおとしじんじゃ)から建真利根ノ命の分霊を受け建立されました。なんと、鳥居や狛犬だけでなくお社も賽銭箱も石で造られているんです。職人の心意気が伝わってきますね。

「絶縁祈願」は、職人が一つ一つ作った御影石の絵馬に、断ち切りたいことやものを書き、強い意思(石)でたたき割ることで、悪い縁と絶縁することができるというものです。良いご縁を呼び込むために、周りに人がいないことを確認してから思いっきり行いましょう。

また、神社には石で作られた御朱印があります。
以前は組合事務所の中にありましたが、休業日や時間外に来たかたにも楽しんでもらいたいと事務所の前に移設されていますので、神社に行った際は記念にぜひ押してくださいね!

石工団地神社は、産業の守護神、地域の守り神として、これからも見守り続けてくれることでしょう。
        石工団地神社
  石の絵馬を叩き割ることで絶縁祈願!
石製スタンプで御朱印を押すことができます

他にも気になる!石工団地

○「団吉くんまつり」と「石の掘り出し市」
毎年楽しみにされているかたが多い年に一度の石工団地のおまつりです。
※2021年は新型コロナウイルスの影響により中止です。

○団地内の東西の通りに注目!
石工団地内の東西の通りの名称は、大黒通り、寿老人通り、福禄寿通り、恵比寿通り、毘沙門通り、弁天通り、布袋通り、という七福神の名前が付けられています。すべての通りを歩くとご利益がありそうですね!
※詳しくは石工団地協同組合事務所で配布しているパンフレットでご確認ください。

いかがでしたか?ぜひ、石工団地に足を運んでみてください。新発見や多くの石製品があなたを待っていますよ!

取材・撮影協力

【撮影協力】
●岡崎石工団地協同組合
(住所)岡崎市上佐々木町字梅ノ木48番地
(TEL)0564-31-3823
(ウェブサイト)http://osd.tukai.jp/#
●石彫の戸松
(住所)岡崎市上佐々木町中切3-1
(TEL)0564-31-2632
(ウェブサイト)http://www.1002s.com/
●磯貝彫刻
(住所)岡崎市上佐々木町字西勝18-2
(TEL)0564-31-4854
(ウェブサイト)http://www.isocho.com/campany