多くのかたに愛されたふじ子が「等身大ふじ子像」としてかえってきました!

公開日:2026.06.30     暮らし
令和7年7月に岡崎市東公園動物園のアイドル、アジアゾウのふじ子が亡くなりました。
あれから1年、岡崎市東公園動物園のゾウ舎には、繊維強化プラスチック製の等身大ふじ子像が置かれ、生前のふじ子と同じように動物園にきたお客さんたちを和ませてくれています。
本物そっくりな等身大ふじ子像。いったいどのようにして制作されたのでしょうか。
今回のレポートでは、等身大ふじ子像制作秘話をお届けします。

制作したのは岡崎城西高等学校美術部

等身大ふじ子像を制作したのは、岡崎市にある岡崎城西高等学校の美術部のみなさんです。

今では、巨大造形を制作したくて岡崎城西高等学校への入学を決める生徒もいるほど、美術部の名物となっている「巨大造形」。
その始まりは2009年にさかのぼります。
「文化祭で作品を展示しても見てもらえる機会が少なく悔しい。大きなものを作ったらみんなの目を引けるはず」という思いから美術室を飛び出し、校庭に作業スペースを設け、部員全員で力を合わせて一つの作品を作り上げる巨大造形制作への挑戦が始まりました。

なぜふじ子が題材に?

岡崎城西高等学校美術部が作品作りにおいて大事にしているモットーは「社会との繋がり」です。
顧問の福岡先生は「美術部の活動を通じて社会に出てから通用する力を身に着けてほしい」と部員たちの背中を押しています。
「我が部は、ただ好きなものを作る、ではなく、何かのためになるか、何かを社会に還元できるか、といったことを部員全員で真剣に考えます。それがしっかり落とし込めているかどうかで取り組む姿勢が変わり、自分の行動に意義と責任が持てるようになります。時々、生徒たちが悩んでいる姿も見ますが、社会に出たときにこの経験がバネとなり原動力となるはず」と熱い想いを語ります。

令和6年度のテーマの決めで、大きな動物を作りたい、と考えた部員たちは、
ゾウなら岡崎には長く愛され続けているアジアゾウのふじ子がいる。
調べると東公園動物園がクラウドファンディングをやっている。
アジアゾウのふじ子像を作ってPRのお手伝いができないか?と制作にかける思いを深めていきました。
そして、東公園動物園を訪れ、「公式で作らせてください」と熱意を伝え、ふじ子像を制作することが決まりました。

ふじ子の大きさや、普段目にすることが難しい背中の形が分かる上から撮影した写真など、飼育員でなければなかなか撮ることができない写真の数々、また実物のふじ子の足跡パネルを借りて寸法を割り出し、リアルな造形を目指しながら、岡崎市を広くPRすることを目標に掲げました。

ふじ子像制作スタート

巨大造形制作では、30人を超える部員がそれぞれ作ったパーツをつなぎ合わせて一つの作品にしていきます。
個々がどれだけ良いものを作っても一体感が無ければ成立しません。

特に、「皮膚のしわ」を表現することに苦労したそうです。
「他の部員が作ったしわと同じように作れたと思ってつなぎ合わせてみると、あれ?なんか違う、と違和感を感じては作り直すことを繰り返しました。しわ一つを表現するにもたくさんの時間を費やしました。」

違和感をなくすために、大事にしたことは「遠くからみること」。
「こだわろうとするとどうしても近くだけを見てしまいがちで、いざ全体を見たときに一体感が欠けていることに気づくことがありました。それに気づいてから、近くで作り込むチームと、遠くから全体を見るチームに分かれ、全体を意識するように心がけました。」

東公園動物園飼育員からのアドバイス

本物そっくりにしようと、部員たちは動物園へ足を運び、くまなく観察したり、写真を撮って部員同士で共有したりして制作を進めていきます。

そんな時、長年ふじ子の飼育を担当し、ふじ子像制作にも携わっていた東公園動物園の飼育員からこんなアドバイスをもらいます。
「ふじ子を見たときに抱く感情は「かわいい」、「やさしそう」、「強そう」、「迫力がある」、人それぞれ違う。それぞれが感じる“ふじ子”を作品に取り入れると“ふじ子らしさ”が表れてくる」。

このアドバイスは、写真に写っているとおりに忠実に再現することを大事にしていた部員たちを刺激し、制作活動を後押ししてくれました。

段ボール製等身大ふじ子像完成~文化祭で展示~

ダンボール製ふじ子像は無事に完成!
文化祭で校庭に展示され、その大きさと実物そっくりな姿はたくさんの来場者を驚かせました。

もっと高いところへ~ふじ子像のバージョンアップ~

当初、部員全員で掲げた目標は「地元岡崎市を広くPRする」。
文化祭での展示を終えた部員たちは「校内での展示にとどまらず、いろいろなところで展示したい」と考えます。
段ボール製ふじ子像を、移動できるように分解式、繊維強化プラスチック製へと作り替えることにしました。

そんなさなか、アジアゾウのふじ子が亡くなりました。
ふじ子像を東公園動物園に展示し、たくさんの人が会いに来てくれたら岡崎市のことも知ってもらえるのでは、と岡崎市へ寄付することを決めます。

夏休みを利用して、卒業生を招き大規模な作業の日を計画しました。
しかし、その約束を交わした直後、ふじ子が息を引き取りました。
あまりにも突然の出来事に言葉を失いましたが、まるでその日に合わせてくれたかのように、最も多くの仲間が集まる日に献花台が設けられ、部員たちは東公園動物園へ駆けつけることができました。
悲しみの中にも、不思議な温かさを感じる、忘れられない時間となりました。

繊維強化プラスチック製ふじ子像完成

ふじ子像を東公園動物園へ搬入
校庭から搬出
東公園動物園で分解式パーツの組み立て
まもなく完成!
ふじ子に寄り添い制作に打ち込んだ期間は、文化祭までの制作期間も合わせると約2年間。
愛らしい瞳、しわがよった皮膚の質感、砂浴びが好きだったふじ子らしく砂がかけられた背中はふじ子の姿そのものです。

「文化祭展示の枠を超えて長い時間をかけて制作したのは初めての経験でした。ようやく完成した安心感でいっぱいでした。また、家族やクラスメイトから『ふじ子像を見に行った』とか『ふじ子のことをもっと知りたくなった』と声をかけてもらい、目標としていた岡崎市のPRにつながった気がして本当にうれしいです。」

次の作品へ挑戦中

ふじ子像制作時には後輩だった部員が最年長として部を引っ張っていく存在になっています。
これまで先輩たちからもらったたくさんのアドバイス、戸惑わないように明確に出してくれた指示が自分たちの支えになっていることを実感するそう。
「先輩たちの姿を見習い、後輩たちを支え、新しい制作を成功させたい」と頼もしい姿を見せます。

2026年の作品テーマは「サグラダファミリア」。
2026年はガウディがこの世を去ってからちょうど100年を迎える節目の年ということで制作を決めました。
完成したら世界へ発信することも構想中だとか。
美術室から校庭へ、校庭から校外へと、自分たちで切り開いてきた舞台は、海を越えて世界へと広がることもあるかも?!

等身大ふじ子像に会いに行こう

高校生が自ら考え、熱い想いと深い愛情をかけて制作した「等身大ふじ子像」。
本物と見間違うほどそっくりです。ぜひ東公園動物園へ足を運んで見に行ってみませんか?