「岩津城跡」文化財指定記念!家康公へつながる松平家発展の礎とは?

公開日:2024.03.29     おでかけ
岩津町にある神社の棟札写しによると、徳川家の前身である松平家が岩津に進出してまもなく600年。今回は、岡崎市の文化財指定を記念して岩津城跡をご紹介。岩津城跡の保存・整備活動を行っている「岩津松平氏輝きの600年」推進懇話会の阿部太郎代表にお話を伺いました。

歴史ロマンあふれる岡崎市岩津町へ

岩津町は豊田市に接する岡崎市の北部にあります。学業の神様・天神さんの愛称で知られる岩津天満宮をはじめ、名刹(名高い寺)や古墳など史跡に富んだ見どころ豊かな町ですが、中でもそのシンボルが岩津城跡です。

岩津城は東西150m南北200mほどで、主郭と南郭及びそれらを結ぶ土橋、主郭をめぐる空堀が主な遺構です。土橋南側は一部地続きの馬出し虎口で、他に主郭北側の郭から西側へ下る枡形、虎口(戦国時代の末期になって、初めて造られた形の城の出入口)、土塁を巡る空堀の構造などいずれも戦国末期の構造であり、徳川家康公と豊臣秀吉公が対立した、1584・85年頃に西三河の他の城郭とともに家康公により整備されたことが推定されます。

松平家の発展と岩津城跡の関係

  • 主郭には休憩用の椅子やパンフレットも

    主郭には休憩用の椅子やパンフレットも

  • 遺構各所で本来の姿が蘇っています

    遺構各所で本来の姿が蘇っています

松平家は岩津進出をきっかけに三河の有力な勢力となりましたが、永正3年(1506)から始まった今川勢の三河侵攻「永正三河大乱」で岩津松平家も壊滅的な状態に。その後、現安城市の「安祥城」を拠点に、隆盛を迎えたのが岩津松平3代信光の子・親忠から始まり、後の徳川家へと発展した安祥松平家。家康公の祖父で、安祥松平7代目当主・清康のとき、岡崎城へ拠点を移しました。

岡崎城の北の守りとして、岩津城は家康公により改修・強化が行われ、中世城郭の構造が完成。曲輪、虎口、南郭、主郭、土橋など、そのほとんど全ての要素が備わる貴重な遺構として、松平家の岩津進出から600年の時を経てこの春、岡崎市の文化財に指定されました。

「岩津松平氏輝きの600年」阿部代表インタビュー

  • 阿部代表と岩津城跡の主郭にて

    阿部代表と岩津城跡の主郭にて

“人と人との関わりを最も大切に”をモットーに、2019年に結成された組織が「岩津松平氏輝きの600年」推進懇話会です。地元の有志や歴史ファンなど、役員20人ほど、ボランティア30人ほどで、それぞれができる範囲で城跡の保存・整備活動を行っています。月に一回行われるボランティアの活動日には小学校や中学校の学校行事として、子どもたちが整備活動を手伝ってくれることも。また40代を中心に若手の会もあり、そのメンバーにも整備することだけが目的ではなく、岩津の価値や文化を発信することが大切であると理解が深まっています。

代表の阿部さんは「岩津地区は、山間部から平野部へ進出を目指す松平家の拠点として重要な地。歴史的な価値のある場所を整備することで地域の活性化と、みんなが誇ることのできる町になることを目指しています」と話します。

岩津は、まだまだ十分に認知されていない歴史の舞台。「岩津松平氏輝きの600年」推進懇話会の取り組みの大きな目的は、岡崎市内外を含めて岩津のことをもっともっと知ってもらうこと。身近に素晴らしい歴史的な財産があるという、その価値を伝えること、と考えています。
「松平から岩津、安祥、岡崎という流れで家康公を輩出する訳ですが、そのプロセスの中で、岩津が見落とされることがないように、岩津の価値や文化の原動力として、歴史上、非常に重要な場所だということを発信していきたい。
また、岩津に新しく住んだかたにも昔から住んでいるかたにも全てのかたに、岩津は素敵なところで重要な歴史的背景があることを知っていただき大事にしてほしい。それが、今後の岩津にとって必ず必要となる、新しいコミュニティのあり方だと思います。みんなに岩津の方を振り向いてもらえるように、みんなで頑張って盛り上げていきたいです(阿部代表)」。
COLUMN
「信光明寺」にお立ち寄り

「信光明寺」にお立ち寄り

岩津城跡から歩いてすぐの麓に佇む「信光明寺」にもぜひお立ち寄りを。宝徳3年(1451)に岩津城主の松平3代信光が祖父・親氏、父・泰親の菩提を弔うために創建。信光の名を取り、名付けられました。

岩津城跡600年の歴史を体感

家康公へとつながる歴史的な大きな一歩が岩津松平の約50年。歴史ロマンあふれる松平家2代泰親・3代信光の世界へ。岩津城跡とその周辺は、様々なゆかりの地を見学したり、のんびりと歩いてめぐったりするのにもほど良い距離感で、これからの季節はちょっとしたハイキング感覚でも楽しめます。岩津城跡の見学所要時間は30分ほど。「岩津松平氏輝きの600年」推進懇話会による竹や枯れ木の片付け等の整備途中のため、足元にはご注意ください。岩津城跡の主郭に立って、岩津600年の歴史に想いを馳せてみては?

■岩津城跡
愛知県岡崎市岩津町東山