山の神様に感謝を伝える神事、帝鎮講

公開日:2018.10.22     "〇にナる" 岡崎まちものがたり
岡崎市東部地区の鉢地町に山の神様が棲んでいるといわれる森があります。地元では「帝鎮講の森」と呼ばれ、12月中下旬頃に山の神様に感謝する神事「帝鎮講」が行われています。
  • 昭和38年は子どもたちが家々を回って藁(わら)を集めました

    昭和38年は子どもたちが家々を回って藁(わら)を集めました

  • 藁をより、縄を編む子どもたち

    藁をより、縄を編む子どもたち

  • かつては大人が抱えるほど太い注連縄を作っていました

    かつては大人が抱えるほど太い注連縄を作っていました

  • お供えの赤飯をのせる藁苞(わらづと)。これは今も作ります

    お供えの赤飯をのせる藁苞(わらづと)。これは今も作ります

  • 現在は鉢地神明社の境内で注連縄を作ります

    現在は鉢地神明社の境内で注連縄を作ります

帝鎮講は男たちだけで行う
「ていちんこう」と読むこの神事は400年以上前から続いている大切な行事です。農村では春になると山の神様が山から里に下り、稲刈りが済んだ秋には山に戻ると考えられており、旧暦11月の第2の申の日の夜、収穫の感謝と翌年の豊作を願う帝鎮講が行われてきました。神事に参加できるのは3歳以上の男たちのみ。神事の準備もすべて男たちの手によって行われ、現在もそれは固く守られています。

時代の流れで働き方が変わり、10年程前から12月中旬から下旬の日曜日に行っていますが、神事に必要な注連縄(しめなわ)や御幣(ごへい)などの飾り物は地元の男たちによる手作りです。神事を行う当日の朝、鉢地町の鉢地神明社に男たちが集まり、焚き火にあたりながら藁(わら)をよって縄にしたり、竹を割ったりしながら準備をします。子どもたちも大人に教わりながら縄をないます。注連縄は神域を作るための長さ120~150mが1本、御神木に巻く8mが1本、さらに帝鎮講の森の入り口に張る中太の注連縄を作ります。昔は直径約40㎝の太い注連縄でしたが、今は人出が少なくそれも難しくなりました。御幣は女竹(めだけ)を用い、大小合わせて36本用意します。
  • 昭和38年は新しいあしなか(ぞうりのこと)を履いて、帝鎮講の森まで歩きました

    昭和38年は新しいあしなか(ぞうりのこと)を履いて、帝鎮講の森まで歩きました

  • 太い注連縄はリヤカーで運びました

    太い注連縄はリヤカーで運びました

  • 今も「きつねもたぬきも帝鎮講」と言いながら歩きます

    今も「きつねもたぬきも帝鎮講」と言いながら歩きます

  • 車では通れない抜け道のような場所を通ります

    車では通れない抜け道のような場所を通ります

帝鎮講の森へ出発!
注連縄や御幣の準備が整うと、いよいよ帝鎮講の森へ出発です。鉢地神明社から帝鎮講の森までの距離は300mほど。大人も子どもも2人1組になって注連縄を運びます。この道中に掛け合う言葉が特徴的です。「きつねもたぬきも帝鎮講」と言いながら歩いていきます。どんな意味があるのかは地元の人も知り得ないことですが、昔からずっと言い伝えられている言葉です。

普段、帝鎮講の森で子どもたちが遊ぶことはありません。地元の女性は森に近づくことさえしません。そこは足を踏み入れてはいけない神聖な場所。この帝鎮講の日しか、この森に入ることはできません。
  • 帝鎮講の森の入口。ここから先、女性は入れません

    帝鎮講の森の入口。ここから先、女性は入れません

  • 身体を清めてから帝鎮講の森に入ります

    身体を清めてから帝鎮講の森に入ります

  • 注連縄を張り、神域を作ります

    注連縄を張り、神域を作ります

  • 神木の幹回りに御幣を立て掛けます

    神木の幹回りに御幣を立て掛けます

  • 小樽(こだる)には御神酒と甘酒が入っています

    小樽(こだる)には御神酒と甘酒が入っています

  • 藁苞(わらづと)に赤飯を盛りつけます

    藁苞(わらづと)に赤飯を盛りつけます

  • お参りをした後、お下がりをいただきます

    お参りをした後、お下がりをいただきます

神様と一緒にご飯をいただく
帝鎮講の森の入り口に着いたら、2本の枝に注連縄をくくりつけて結界を作ります。そばに流れている沢水を榊(さかき)ですくって身体にかけ、身を清めてから森へ入ります。

森の中には御神木があり、御神木を中心に注連縄を張り巡らせて、周囲150mほどの神域を作ります。御神木の幹回りに御幣を立て掛け、御神酒と甘酒を入れた小さな樽を吊るすように飾ります。

御神木の前に檜(ひのき)の生葉(なまは)を広げ、その上に持参した赤飯を俵型に握って盛り付けます。お供え物が揃ったら般若心経を唱え、みんなでお下がりの赤飯をその場で食べます。昔は初めて山に入る男の子を「初山の子」と呼び、お祝いも兼ねて、子供の顔より大きな赤飯のおにぎりを食べたそうです。お供え物はたくさんあるので食べ切ることはできません。残ったものはすべて森に置いたままにして、山の神様だけでなく、山に棲んでいる動物たちに捧げます。

今年の帝鎮講の日は12月23日の日曜日。人手不足で大変なことも多いそうですが、次世代に伝えていきたい鉢地町の大切な神事です。
◯取材協力:鉢地町のみなさん
◯参考文献
「帝鎮講の資料 昭和38年頃の記録」/記録:日本常民文化研究所 愛知県支部
「民俗学辞典」/編者:民俗学研究所、発行:東京堂出版
◯帝鎮講のdata
■開催日:12月第3日曜日
※2018年は12月23日(日)の予定
■時間:8時半に鉢地神明社に集合、11時頃に帝鎮講の森へ向かう
■場所:鉢地神明社(愛知県岡崎市鉢地町字高山下2)
■駐車場:あり。当日、現地で確認してください。
※注連縄づくりなどの作業風景は女性も見学できます。当日は鉢地神明社で防災訓練も行っています。

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インフォメーション

場所:愛知県岡崎市鉢地町字高山下2